~角膜外来では、角膜疾患全般の治療を行っています~
角膜外来では、ドライアイ、重症アレルギー、難治性角膜ヘルペス、円錐角膜など角膜疾患全般の治療を行っています。 角膜手術もエキシマレーザーを用いたPTK(治療的角膜切除術)からフェムトセカンドレーザーを用いた角膜移植術まで、幅広く行っています。 とくに最近は、円錐角膜の診療に力を入れており、下記のような様々な治療を行っています。
担当の小島隆司医師は円錐角膜の専門医で、クロスリンキングの研究などを学会で発表し、国内外で認められています。ボストンレンズについては留学中に学び、当院は国内で唯一処方のできるクリニックです。
また、円錐角膜に対する理解や新しい治療についての認知度向上の為、眼科医に対して全国学会、地方学会にて講演活動も行っています。
第59回日本コンタクトレンズ学会総会では、優秀な発表としてトピックス賞を受賞しています。
<講演活動>
- ■2015年6月15日 岐阜県眼科医会談話会
円錐角膜アップデート~最新の診断から治療まで~ - ■2015年6月19日 JSCRS総会
インストラクションコース「実践! 円錐角膜診療 診断から治療まで」
一般講演「角膜クロスリンキングの初期・中期成績の報告」 - ■2015年10月23日 第69回日本臨床眼科学会
一般講演「進行性円錐角膜症例における角膜クロスリンキング前後の角膜の生体力学特性の変化」 - ■2016年6月24日 第31回JSCRS学術総会
インストラクションコース「これからの円錐角膜診療 ~進行を許さない!~」 - ■2016年7月2日 第59回日本コンタクトレンズ学会総会
一般講演「円錐角膜に対して強膜レンズPROSEを処方した症例の検討」 - ■2016年11月4日 第70回日本臨床眼科学会
インストラクションコース「一から学ぶ円錐角膜 ~明日から迷わない対処方法」 - ■2017年4月6日 第121回日本眼科学会総会
一般講演「進行性円錐角膜における角膜クロスリンキング術後3年報告」 - ■2017年6月23日 第32回JSCRS学術総会
シンポジウム「難症例の屈折矯正手術(円錐角膜眼など)」 - ■2018年 円錐角膜研究会(京都)
「円錐角膜に対するスクレラルレンズ処方」 - ■2018年 JSCRS
シンポジウム「角膜クロスリンキング治療の適応」 - ■2019年 JSCRS
インストラクションコース「角膜クロスリン キング治療の実際」 - ■2019年 円錐角膜研究会(京都)
「円錐角膜眼の 生体力学特性」
<眼科雑誌への寄稿>
- 「眼光学的側面からみた円錐角膜の診断と治療」小島隆司
視覚の科学 Vol.37(2016) No.1 - 「円錐角膜眼におけるプラチドリング方式と前眼部OCT方式の角膜形状解析装置の測定値の比較」
日本視能訓練士協会誌(0387-5172)44巻 Page149-156(2015.12) - 「新しい検査機器の読み方」
Corvis ST IOL & RS(1341-3678)29巻3号 Page414-418(2015.09) - 「進行性円錐角膜に対して行った角膜クロスリンキング術前後における角膜形状変化の検討」
日本視能訓練士協会誌(0387-5172)43巻 Page227-232(2014.12) - 「ボストンレンズの処方における視能訓練士の役割」
日本視能訓練士協会誌(0387-5172)38巻 Page265-270(2009.11) - 「どう診て どう治す? 円錐角膜」小島隆司(分担執筆)
※日本初の円錐角膜の診断・治療に特化した眼科医向けの書籍。 - 「これでわかる眼内レンズ度数計算のコツ、角膜屈折力からみたIOL度数計算のコツ:円錐角膜(Steepな場合)」小島隆司
Monthly Book, OCULISTA 2018年6月号 - 屈折矯正手術セミナー-スキルアップ講座-192.角膜クロスリンキングの中長期結果
あたらしい眼科 33巻 5号 pp.683-684 - 特集 円錐角膜 トーリックIOLやpinhole IOLなどを用いた白内障手術
IOL&RS Vol.32 No.1 pp 27-32, 2018
~担当の小島医師より~
円錐角膜の初診患者様は10~20歳代の方が多く、初めて診断された病気が円錐角膜という方も多いです。このため、非常に深刻な面持ちでご両親と一緒にいらっしゃる印象があります。現在円錐角膜は、適切に治療していけば大きく困ることはない病気になってきました。治療内容は、患者様と相談して納得していただいた上で決めていきたいと考えていますので、不安のない状態で過ごせるように、心配なことは診察の際にご遠慮なくお聞きください。
円錐角膜治療
角膜がもともと弱いために、眼内の圧力に負けて徐々に突出してきてしまう病気が円錐角膜です。レンズの働きをする角膜が歪むため、進行すると視力が下がります。 10~20歳代で発症することが多く、見づらくなってメガネを作り直そうとして、メガネで矯正できないと言われ、眼科に紹介されることが多いようです。
<自然経過>
円錐角膜は若いほど進行しやすく、進行とともに視力が低下するとメガネでは矯正できなくなります。アトピー性皮膚炎やアレルギー性結膜炎で目をこする癖のある方は、進行が早いと言われています。
<治療>
円錐角膜の治療は、進行予防治療と屈折矯正(視力矯正)治療に分かれ、適切な時期に適切な治療を受けることが非常に重要です。治療は以下のような流れです。
角膜クロスリンキング(進行予防治療)
角膜の強度を高めるための治療です。視力は若干改善傾向にありますが、基本的に進行予防の治療であるため、著しい改善は期待できません。このため、進行期にあたる患者様に対して、重症化を防ぐことを目的として行います。
欧州では標準的な円錐角膜の治療ですが、日本ではまだ厚労省未認可であるため、当院では倫理委員会の承認を得た上で、自費診療で治療を行っています。
カスタムクロスリンキング始めました。
モザイクシステムを導入し、弱くなっている部分だけに、より強いクロスリンキング効果を起こさせるように紫外線の照射を行い、進行予防と角膜形状の改善ができるようになりました。
通常の角膜クロスリンキング
カスタム角膜クロスリンキング
円錐角膜初期の患者様には視力の改善効果が期待できます。ある程度進行していると視力改善の実感は小さいものの、角膜の突出が軽減できますので、ハードコンタクトレンズの装用感を改善する効果が期待できます。
<モザイクシステム>
日本に3台しかない米国アベドロ社のモザイクシステムを導入いたしました。術前検査で行った角膜形状のデータを取り込んで手術プランを作成し、手術プランに沿った紫外線照射を行います。
突出部位の面積は小さいため、正確にその部位に照射するために精度の高いアイトラッキング機能(目の微小な動きに対して追従し照射できる機能)を備えています。
<費用>
- 片眼:275,000円(税込)
<リスクについて>
大きな合併症はほとんどなく安全な治療法ですが、稀に感染症、無菌性炎症などのリスクがあります。また進行予防効果は90%程度と高いですが、中には再進行や無効例の報告があります。
各種ハードコンタクトレンズ
円錐角膜が進行すると、ハードコンタクトレンズでの視力矯正が必要になります。若いうちからハードコンタクトレンズに慣れて使えるようになっておくことが重要であるため、装用指導も含めて重点的に処方しています。軽症の方から重症の方まで対応できるように数種類の円錐角膜用レンズを扱い、どうしてもハードレンズに馴染めない方には、ソフトコンタクトレンズの上にハードコンタクトレンズを乗せるピギーバックという方法を用います。これで多くの方は異物感なく装用することができます。
特殊コンタクトレンズ(ボストンレンズ、ミニスクレラルレンズ、ハイブリッドコンタクトレンズ、ケラソフト)
小島医師が、留学していたボストンで学んで取り扱いを始めた特殊コンタクトレンズで、名古屋アイクリニックはアジアでの拠点となり海外からの患者様にも処方しています。 このレンズは角膜に触らず強膜(白目の部分)で支えるため、異物感がほとんどないのが利点です。円錐角膜の重症度が高く、長時間ハードコンタクトレンズが装用できない場合や、若いうちは通常のハードコンタクトレンズができたが、年齢とともに目がすぐに痛くなり装用できなくなった場合に処方しています。基本的にはずれることがありませんので、仕事内容などによって、通常のハードコンタクトレンズがずれて装用しづらい方にも処方しています。ただし、円錐角膜の場合、視力は通常のハードコンタクトレンズと同等で、ボストンレンズで視力が劇的に改善するわけではありません。このコンタクトレンズは厚生労働省未認可の治療ですので、当院の倫理委員会承認後に自費診療として処方しています。
新規の方が両眼 550,000円(税込)、片眼 300,000円(税込)(1年間の診察料込み)。
既存の方で新しく作成する場合は1枚120,000円(税込)となります。
また2018年より、ミニスクレラルレンズ(i-sight)というコンタクトレンズ処方を開始しています。このコンタクトレンズは基本的にはボストンレンズと同じ強膜レンズです。ボストンレンズに比べたメリットは小さくて装用しやすいことですが、重症な円錐角膜には向かないというデメリットがあります。
片眼 104,500円(税込)(4ヶ月の診察料込み)となります。
また同時期にハイブリッドコンタクトレンズ(EyeBrid Silicone)の処方も開始しています。このレンズは中心部がハードコンタクトレンズで、周辺部がソフトコンタクトレンズ素材で出来ています。両方のレンズのいいとこ取りをしたようなコンタクトレンズで、装用感に優れ、屈折矯正効果も高いです。デメリットは耐久性が低く半年~1年で交換が必要になる点です。
初回の処方費用は片眼 55,000円(税込)(3ヶ月の診察料込み)となります。
ミニスクレラルレンズは、装用感が非常によいことが特長です。
ミニスクレラルレンズの装用は、スタッフが丁寧にサポートします。
2019年に導入したケラソフトは、イギリス製のソフトコンタクトレンズで、軽度の円錐角膜や乱視の強い円錐角膜に適しています。ソフトコンタクトレンズなので、スポーツに向いていますが、使い捨てではありません。
角膜リング
角膜リングは、角膜内に透明なリングを入れて、角膜の形状を改善させ、乱視などの角膜の歪みを矯正する方法です。ハードコンタクトレンズが装用できず、少しでも裸眼視力を改善させたい方に適しています。ただし角膜リングでの矯正効果はハードコンタクトレンズよりは劣るので、重症度が高い方には不向きです。またハードコンタクトレンズのフィッティング改善という目的で手術する場合もあります。円錐角膜の方は、角膜が突出しているために同じ場所がコンタクトレンズで擦れて傷ができ、痛くなったり角膜が白くなって見づらくなることがあります。この手術で角膜の突出を和らげ、コンタクトレンズが乗りやすくすることもできます。
当院では現在、フェムトセカンドレーザーを使用して角膜リング手術を行っています。フェムトセカンドレーザーを使用することで、安全かつ正確にリングが挿入できます。
自費診療で、片眼 242,000円です。
<リスクについて>
術後眼を擦ったりすることでリングの位置が移動する合併症が起こる可能性があります。円錐角膜は角膜の剛性に個人差があるため、角膜内リングの効果には個人差があります。
トーリックICL
円錐角膜の進行が止まっている方向けの屈折矯正方法です。ICLは、厚生労働省承認の有水晶体眼内レンズです。この治療は、メガネでもある程度視力が出る方が対象です。
日帰り角膜移植術
ハードコンタクトレンズでも視力が十分に矯正できない場合、フェムトセカンドレーザーを用いて、日帰り角膜移植を行っています。レーザーを用いることで、ドナー角膜とレシピエント角膜をぴったりと合わせることができ、移植によって生じる新たな乱視を最小限に抑えることができます。手術時間は約1時間で、深層角膜移植術という、角膜の悪い部分のみを取り替える、拒絶反応が起きにくい術式を採用しています。
入院をご希望の方は、岐阜赤十字病院(岐阜市)、JCHO中京病院(名古屋市)にて小島医師による執刀が可能です(ただしこの場合、レーザーは使用できません)。
現在までに80人以上の日帰り手術を行いましたが、その方々にアンケートした結果、ほとんどの方がもう一度受けるとしても日帰り手術を希望すると回答されています。
角膜は国内ドナー及び海外ドナー(アメリカ、シアトルのアイバンクと提携)のどちらかが選択できますが、国内ドナーは手配が難しく、ご希望どおりに日程が決められない場合もあります。
円錐角膜の検査とは?
円錐角膜で大切なのは円錐角膜の診断と重症度の判定です。当院では角膜の表側と裏側の両方が測定できる角膜形状装置-前眼部OCT(CASIA)を用いて診断を行っています。
円錐角膜と診断された後も、角膜形状装置CASIAを用いて定期的に進行をしっかりチェックしていく必要があります。
円錐角膜に合併するアレルギーの治療について
円錐角膜はアトピー性皮膚炎やアレルギー性結膜炎を伴っていることが多く、これが十分に治療できていないと、眼をこすることによってさらに円錐角膜が進行することもあります。以前はステロイドの治療がメインであった重症アレルギーも、免疫抑制薬の点眼を組み合わせて、副作用を抑えて治療ができるようになってきました。難治性のアレルギー性結膜炎治療も行っていますので、お気軽にご相談ください。
円錐角膜に合併する眼瞼下垂の治療
円錐角膜は長期間のハードコンタクトレンズ装用が必要になるため、年齢とともに眼瞼下垂になることが比較的多いと言えます。そのような場合は炭酸ガスレーザーを用いた小切開眼瞼下垂手術を行っています。
当院への受診について
円錐角膜の専門治療が行える施設が全国で限られていることもあり、遠方から来院される方も多い状況です。近隣のホテルのご案内なども行っていますので、お気軽にお問い合わせください。治療後はお近くの眼科でのフォローアップが可能な場合もありますので、ご相談ください。