大切なお子様の目を守るには
最近では近視の人が世界的に増加しており、大きな社会問題となっています。
日本では2019年、中学校卒業後の小児の近視は80~90%、そのうち約20%が強度近視です。
(小児の近視 より)
子供の近視
-
近視には遺伝的要因と環境要因があります。
近視の多くは学童期に発症し、小学校4~5年生にかけて進行が著しく、24~25歳くらいまでで進行が止まることが多いようです。
(近視の眼鏡と治療 より)
環境要因はパソコンやゲーム、スマホなど近くを見る機会が多いこと、または屋外で遊ぶことが少なくなり日光に当たる時間が減ったことで近視になると言われています。 近視進行予防治療が、将来のお子様の目や生活に大きく影響すると考えられています。
近視には単純近視と病的近視に分けられますが、病的近視になると網膜や視神経が障害され、眼鏡などで矯正しても視力がでない失明の原因となります。
学会では、6D以上の近視で網膜剥離になる確率が増え、重篤な疾患にかかりやすくなると言われています。30%近視が抑制できると、重篤疾患になる確率が24%から5%まで減るとの報告があります。
名古屋アイクリニックでは「子供の近視進行抑制」に早くから取り組んでいます。
眼の仕組み
まず眼の見える仕組みですが、物を見た時に目から入った光が水晶体で調節され網膜にピントが合うことで見ることができます。
屈折に関する3つの構成要素
この3つのバランスで近視かどうかが決まります。
- 角膜屈折力
- 水晶体屈折力
- 眼軸長
眼軸が延びないようにするには
野外活動
屋外で過ごす時間が長い小児は、近視になる確率が低いことが明らかになっています。
1日2時間以上野外活動をすると眼軸延長抑制効果があると言われています。
屋外活動が近視抑制効果がある理由は、遠くを見る時間が増えることと、光の強さと、色収差など色々な要因が関係しているのではないかと考えられています。
すでに近視になってしまった子供の近視進行を遅らせる効果はないと言われていますので、近視になる前に外で遊ぶ時間を増やしましょう。
目にあった眼鏡を使う
学年や席の位置によって変わりますが、学校で黒板の字が見づらくなったら眼鏡をかける基準になることが多いです。
少し前までは、初めての眼鏡など弱めに合わせることが多かったのですが、最近では遠くが良く見えるようにぴったり合わせた方が近視が進みづらいと言われています。
また、眼鏡をかけることで近視が進むことがあると思われる方もいらっしゃいますが、網膜にピントが合っていないと、ピントを合わせようと眼軸が伸び近視になります。網膜にしっかりピントを合わせてみる事が大切です。
サポート眼鏡
近くを見るときには「調節ラグ」という、カメラに例えるとオートフォーカスの甘さが起きます。
遠くにピントが合っている正視の人が60センチ以内を見ると調節ラグが起き網膜に映る像がぼやけて眼軸が伸びます。これを避けるために近くを長時間見る人には、調節力をサポートする「サポート眼鏡」を使うと良いでしょう。単焦点の眼鏡に比べて11~21%近視抑制効果があると言われています。
(川崎医科大学 長谷部聡 著)
統計学的には抑制効果があると言われていますが、臨床的治療法としては効果が弱いという意見もあります。
(Cochrane共同計画)
遠近両用コンタクトレンズ
サポート眼鏡と同じように調節力をサポートするコンタクトレンズです。8歳くらいまでが効果的と言われています。
単焦点の眼鏡やコンタクトレンズと比較すると約40%の抑制効果があると言われています。
(伊丹中央眼科 二宮さゆり 著)
ただし、子供のコンタクトレンズの使用は保護者の方の管理が必要です。
オルソケラトロジー
寝るときに特殊なハードコンタクトレンズを装着して、朝に外します。日中の生活を裸眼で過ごす方法です。
単焦点眼鏡と比較すると、オルソケラトロジーの方が36%の抑制効果があると言われています。
(筑波大学医学部医療系 眼科 平岡孝浩 著)
遠くを見た時に網膜の周辺のピントが合っていないと眼軸が伸びるのではないかと言われるようになりました。オルソケラトロジーは周辺部のピントのずれが改善されるので近視の進行が抑制されると考えられています。
強い近視の方が抑制効果が高いと言われています。オルソケラトロジーの適応範囲は-4D位ですが、強い近視の方はオルソケラトロジーで残った近視を、眼鏡で矯正しても近視抑制効果があると言われています。
低濃度アトロピン
アトロピン点眼は「近視進行を遅らせるもっとも有効な治療法」であることが分かっています。(Walline JJ など)
作用機序については不明な点がありますが、アトロピンは網膜や脈絡膜内のムスカリン受容体に直接作用して眼軸長の伸長を抑制するものと考えられています。
副作用が少なく手軽に使える0.01%の低濃度アトロピンが急速に普及しています。現在は未承認ですが、2019年8月1日から低濃度アトロピン点眼液の治験が始まりました。
普段から気を付けること
近視にならないために、日常生活で普段から気を付けることが大切です。
- 長時間近くをみて作業をしない
- 外での活動を多くする
- ストレスをなくす
近視が気になりだしたら…
どの治療も近視が強くなってからでは、近視抑制効果が得られなくなります。
近視抑制の治療は早めに開始することで効果が得られるので、見え方が気になりだしたら早めに受診するようにしましょう。